大地よ、これがおんみの願うところではないか、目に見えぬものとして
われわれの心のなかによみがえることが?
──それがおんみの夢ではないか、
いつか目に見えぬものとなることが。
──そうだ、大地よ! 目に見えぬものとしてよみがえることが!
……
もはやおんみの数々の春は要らない──、一度の春、
ああ、たった一度の春でいいのだ。それでもわたしの血にはゆたかすぎる。
リルケ 『ドゥイノの悲歌』 手塚富雄訳 岩波文庫
朝早く、仕事の前に散り際の桜を眺めつつリルケを読む。
まだ寒さが残っており、風が冷たい。
体が芯から冷えていく。
だけれども、この場を離れがたくしているもの、それはこの一瞬がやがて、すぐに過去となるという冷厳な事実。
この朝陽も、桜も、昨夜から居残っている酔いもさめない花見客も、この寒さも、なにもかも泡の如くすぐに消える。
残るのは、また一つ増えた、郷愁の念。
さはれさはれ、去年の雪、いまはいづこ?
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by straylight
| 2008-04-03 23:16
| 雑談