……懐かしい味だった。
つまり小麦粉たっぷりな感触だったということ。
わたしが外はカリッとして中がトロッとしたたこ焼きに初めてあったのはいまから4.5年前でまだ大学生だった頃だ。
その日は友人の家に遊びに行き、その途中で屋台のたこ焼きがあったので買おうという話になった。
無口な若い男がたこ焼きを焼いていて、なぜかそのまわりに数人のおばちゃんがいた。
そのおばちゃんによると、その男は音楽をやっていて、その活動資金のためにここでたこ焼きを売っているのだがそれが絶品だからぜひ食べて行けということだった。
少し時間がかかるけど、待っていろと言われて、別に急ぐ当てもなかったのでゆったりと待っていたのだが、確かに時間がかかる。
それは冬の寒い日のことで、屋台の前に車でたこ焼きを待っていた男とは出来上がるのが遅いということで去ってしまった。
しかしその屋台の男はそれを気にする風でもなく、黙々と焼いていた。
いまでは銀だこなどで有名になったあの食感もその時のインパクトと来たら言葉に出来ないものだった。
それまで食べていたたこ焼きは何だったのかと、あの小麦粉がまったりとしたあれは何だったのかと詰問したいほどそれはおいしかった。
いま頭をひねってもあの男がしゃべったところを思い出すことは出来ない。
その時以来おいしいと思ったたこ焼きには何度か出会った。
やはり国立で銀だこを冬の寒い日につついたこともしっかりと覚えている。
と言うことで、もはやあのかつての懐かしいねっちょりとしたたこ焼きは受け付けられなくなりました。
#
by straylight
| 2005-06-23 00:42
| たべもの